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スペースオペラ用語辞典/ま行

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マイトガイ[まいと・がい](参考)

  1. 映画「渡り鳥」「流れ者」シリーズで有名な日活アクション映画俳優小林旭氏のニックネーム。
    主演映画「爆薬(ダイナマイト)に火を付けろ」のタイトルから「マイトガイ」のニックネームが付いたらしい。

  2. RPGの高位職業として「わかだいしょう」とか「まいとがい」ってのが使えると楽しいがなあ.....今度自分でテーブルトークRPGを作る時には是非取り入ることにしよう!!
    どちらも運動神経抜群だが徒手空拳で(ギターを武器の代りに使える!?)運動能力と幸運に長けた遊び人というイメージかな?幸運度は最高と最低を往復する---中間は無い---が、幸運度最低の時は一時的にヒットポイント最高になる....というのはどうだろう?


マクロ・コスモス[まくろ・こすもす](参考)

  1. ミクロ・コスモスの項を参照のこと。


マス・ドライバ[ます・どらいば](参考)

  1. もっぱら宇宙空間または低重力環境下で使用される物資移送手段のひとつ。

  2. 一種のコンテナに積載した物資を長大なアームの先端に取り付けて回転させ、十分に加速したところで切り離し、接線方向へ飛ばすというもので、巨大・強力な「ウルトラマシン(またはロボ・ピッチャ)」と思って差し支えない。多くの場合、飛ばされるコンテナ自体はエンジンを持たないため、単純な軌道を描いて移送する場合に使用される。

  3. R.A.ハイラインの「月は無慈悲な夜の女王」でも上記のようなマスドライバが登場し、月の独立戦争において地球を爆撃する手段として使用され大きな戦果を上げた。この場合、爆撃の弾丸はただの岩塊で良く、地球〜月間の位置エネルギー差が岩塊の運動エネルギーとなり、地表に着いたとたんに膨大な熱エネルギーに変わる。その威力は核爆弾にも匹敵し(貫通力はそれ以上かもしれない)、しかも放射能の心配はおそらく無いであろうから、爆撃する方から見ても憂い無く使える良い兵器と言うことができる。しかも弾丸はただの岩であるから、当面弾切れを心配する必要も無いのである。

    これは実に素晴らしいアイデアであり、将来本当に月植民地が地球を攻撃するようなことが起こったら、おそらく実際に攻撃手段として使用されるであろう。しかも、これと反対に地球から月を爆撃しようとすると如何に大変か?はアポロロケットのサイズを考えれば納得いただけよう。このためマスドライバ爆撃に対しては、有効な直接の報復手段が無いと言って良い。

    マスドライバで飛ばされた岩塊が地球に落下する様を想像すれば誰でも思い付くことであろうが、某有名宇宙戦艦アニメーション・シリーズにおける「遊○爆弾」のアイデアの元イメージの一つと思われる。

  4. もっともらしく書いてはいるが、マスドライバという名称が示すように「物資をふっ飛ばす」ものなら形式用途を問わずこのように呼ばれるようである。
    作品によっては、地球上からリニアモータ等で物資やシャトルを打ち上げるような「カタパルト」に対してもこのような呼び方をしている場合も有る。


マゼラン星雲[まぜらん・せいうん](参考)

  1. 我々の太陽系が属している銀河系から16〜17万光年離れた距離の、丁度随伴するような位置にある星雲(銀河)。大小2つが並んでおり大きい方を大マゼラン雲、小さい方を小マゼラン雲と呼ぶ。

    銀河系から16〜17万光年離れた距離と言っても、プラスマイナス1万光年くらいの誤差は見込まねばなるまい。大体がこの16〜17万光年という数字も我々の銀河系自身のどのあたりとマゼラン星雲側のどことの距離なのかもさっぱり分からないのでこれは仕方がない。

  2. R.A.ハインライン作「スターファイター」(創元文庫SF)のクライマックスで、マゼラン雲に到着した主人公が夜空を見上げると、頭上にマゼラン雲が天の川として天にかかり、それの背景に渦巻銀河(銀河系)が見えるという素晴らしいシーンがある。
    遠い未来に銀河系外へ手軽に旅行できるようになったら、これを実際に見るだけでもマゼラン星雲へ行ってみる価値が有りそうだ。


マッカンドルー航法[まっかんどるー・こうほう](マッカンドルー航宙記)

  1. C.シェフィールド作「マッカンドルー航宙記」に登場する宇宙船の動作原理で、「加速による衝撃を体感せずに数十Gで加速できる」というもの。

    基本アイデアは途方も無くマッドだが、その実大変分かり易いものである。
    先ず宇宙船の主船体を超高密度で巨大な円盤とし、これの周辺部近くに主エンジンをサークル状に並べて取り付け、円盤をその面に垂直に推進できるようにする。さらに円盤の中心に垂直な軸を建ててテール(船尾)とし、ここにテール軸上をスライドできるカプセルを取り付けて居住区にする。

    高密度円盤それ自身の重力は居住区を円盤へ引き付けるように作用するが、この力の向きは宇宙船が主エンジンで加速される時に居住区にかかる力とは正反対である。このため居住区と円盤との距離を適当に制御すれば---円盤からの重力は円盤と居住区との距離の2乗に反比例する---常に居住区内部は快適なGに保たれる。また当然ながら、テールの最先端---円盤から最も遠い---に居住区がある時は、円盤からの重力がちょうど1Gになるように設計される。

    高密度円盤の重力で加速のGを打ち消すから、円盤の発生するGが大体において宇宙船の最高加速度となる。シェフィールドの原作では最大50Gである。

    宇宙船の進行方向に高密度円盤があるため、高速飛行時の星間物質との衝突に対する対策ともなり、実用的なデザインでもある。


マッド・サイエンティスト[まっど・さいえんてぃすと](参考)

  1. 気の狂った科学者のこと。インベンションストーリーの流れを汲むスペース・オペラにとっては、シンボリックな存在の一つ。

    大抵才能だけは常人を遥かに上回っていることが多いが、
    「重力制御実験に彗星を一つ地上へ落とし」たり、
    「自分の肉体を切り取りながら順々に食べ」たり、
    「電気仕掛けの潜水艦で次々船を沈め」たり、
    「物質電送機に人間とハエを一緒に入れ」たり、
    「タイムマシンで過去へロボットを送り込み、先祖の借金を消し」たり、
    同じく「先祖の結婚相手を変えちゃっ」たり、
    「ほとんど趣味で頭脳移植をし」たり、
    「国家予算で作ったロボットを勝手にサーカスに売り飛ばし」たり、
    ...と、全くもって迷惑な方々である。

  2. 本人の精神はまともだが、気が狂ったとしか思えないような珍奇な発想の発明・研究を続ける科学者のこと。実在した人ではニコラ・テスラがこちらの一人と思われる。少なくとも同時代の人にはそのように思えたに違いない。

  3. 「マッドサイエンティスト」というアンソロジーが創元推理文庫から出ております。
    長らく入手困難であったところ、最近(1999年)復刊されました。パチパチパチ。

  4. 「TDSF−HP」(リンクページ参照)に、その名もズバリ「マッドサイエンティスト入門」というコーナがあります。詳しい考察はこちらを御覧あれ。


マードネール戦艦[まーどねーる・せんかん](宇宙のスカイラーク)

  1. 惑星オスノーム・マードネール国の魚雷形空中戦艦。

  2. 作中では単に“戦艦”と記されているのみである。しかし、シートン一行が一目見て“戦艦”と認識したくらいであるから、“戦艦のように巨大な航空機”ではなく、まさしく“空を飛ぶ戦艦”のシルエットを持っているらしい。

  3. 全体の形は“魚雷形”であると記されているが、これは“ツェッペリン式(硬式)飛行船”をイメージしているのであろう。ツェッペリンが飛行船を発明したのが1900年であるから、スミスは少年時代に写真などでツェッペリンの飛行船を知っていたであろうし、空を行く巨体が深く印象付けられたことは確実である。巨大な飛行船を装甲の皮膚で覆って上甲板と艦橋構造物を載せ、あちこちに武骨なバルジとデッキを張り出し、大小無数の砲塔や探照灯を装備した重厚な艦影が頭に思い浮かぶ。

  4. 別の文中で、コンダール国の戦艦の装甲厚さは1インチであることが記されており、マードネールの戦艦もほぼ同様であると思われる。この装甲は地球の装甲板に換算すると50インチ以上であり(大和の装甲板でさえ、厚い箇所で600ミリ程度)、その防御力は想像を絶する。

  5. 最大クラスの巨艦の場合、大砲を数百門装備している。いわゆる“主砲”“副砲”“高角砲”全ての合計と考えるのが妥当であろうが、これでも地球の戦艦と比べると信じられないような重武装である。マードネールの戦艦は飛行戦艦であるので、地球人の戦艦と異なり喫水線下にも武装が取り付けられるためである。正しくハリネズミのように武装可能で、航空機による爆撃くらいでは沈みそうに無い。

  6. 搭載兵装の種類も実に多様で、スカイラーク号との空中戦において使用されたものだけでも、通常の弾丸の他“亜音波砲”“電磁波砲”“閃光弾”“無線操縦ミサイル”などが記されている。

  7. 動力関係についての描写は乏しく、良くは分からない。先に述べたように基本イメージが飛行船であると思われるので、船体自体がある程度の浮力は持っているのであろうが、それだけではこれほどの重装備艦の浮上には力不足である。プロペラと翼は付いているので、これでもって半ば力ずくで浮上しているらしい。戦闘中の描写から“オスノーム大気中の音速”はマッハ数十程度らしいと(やや強引に)推測できるので、当然ながらプロペラの先端失速も起こり難く、プロペラ推進の限界は地球のそれに比べてずっと高いところにあると思われる。オスノーム人が飛行動力としてプロペラを使用しているのはこのためであろう。オスノームにおいては、ジェット・エンジンの必要性はかなり後になるまで発生しなかったのではなかろうか。

  8. シートンらがやって来る以前、オスノーム人は原子力について何も知らなかったと描かれているので、エンジンは内燃機関の高度に発達したものと思われる。恐らくは、巨大な星型レシプロエンジン(当然継ぎ目のないアレナック製で、地球のジェットエンジンを超える高出力が期待できる。)が使われているのであろう。

  9. 黒煙を噴きつつ轟音とともに飛来する巨艦の群とは、何とも心踊る風景ではないか!(余談であるが、このようなシーンはCG特撮ではなく、質感と重量感にあふれた巨大な金属製のミニチュアで見せてほしいものである。

魔法の月[まほう・の・つき](キャプテンフューチャー・シリーズ)

  1. 冥王星の3番目の衛星「スティックス」の通称。
    住人たるスティックス人たちが幻を作り出す特殊能力を持っていることから、このような呼び名がある。

    スティックスは長らく「その表面が全て海に覆われている」と信じられてきたが、これはスティックス人たちの作り出した幻であったことが現在では広く知られている。これは、「暗黒星大接近」事件のおりフューチャーメンにより明らかになったものである。
    その後もスティックス人たちは外部(太陽系諸惑星)との関わりを好まず、また自らも外部への干渉をしないという伝統をかたくなに守っており、太陽系警察機構による治安維持をも受け入ていない。

    「暗黒星大接近」および「魔法の月の決闘」に登場する。

  2. 当初は「不思議な衛星」「魔法の月」としてのみ知られていたスティックスだが、現在では太陽系最大のダイアモンド鉱山が発見されており、これが原因で「魔法の月の決闘」事件が発生したことは広く知られている通りである。

    この事件を契機として、スティックス人たちも太陽系警察による治安維持・警備を受け入れるようになった。


マン・マシンの昭和伝説[まん・ましん・の・しょうわ・でんせつ](参考)

  1. 前間孝則氏による傑作ノンフィクション。
    第二次大戦〜高度成長期にいたる我国の技術史を「航空機産業から自動車産業への人材の流れ」に着目して描いたもの。前半は「航空機エンジニアたちの苦闘」、後半は「自動車産業を支えるエンジニアたち」といった内容で、非常に読み応えがある。おすすめであります。

    戦後の自動車産業の勃興は「GHQに航空機開発を禁止された航空機エンジニアたちが、はけ口を求めて発展途上の自動車産業に流れ込んだ」ことによる。とは一種の常識としてはなんとなく知っていたが、こうして読むとまた格別の感動がある。

  2. 講談社文庫(上下2冊)で入手可能だが、最近の文庫本は新陳代謝が激しいので油断はならない。とくに本書のような分厚い本は、書店の棚を大きく占領するから敬遠されがちで、早く買っとかないと無くなっちゃうよ!


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ミクロ・コスモス[みくろ・こすもす](参考)

  1. 太陽系(恒星系)の構造と原子の構造が−−−どちらも中心の大質量の周囲を比較的小さな質量が公転している−−−ちょいと見には似ているということから発想された、原子大の太陽系が存在するのでは?というアイデア。

    筆者の知る限り(この場合は大元帥の著書で紹介されている限り、ということだが)、レイ・カミングスの「黄金原子の中の乙女(1919年)」が最初のようである。H・G・ウェルズあたりがこのアイデアで短編を書いていてもおかしくはないが...もしかして??

  2. このアイデアを反対方向に拡張すると「マクロ・コスモス」−−−我々の太陽系は更に巨大な世界の原子の一つに過ぎないのでは?−−−というやつになり、これもやっぱりレイ・カミングスの「宇宙の果てを越えて」で作品化されている。アイデア大王レイ・カミングスの面目躍如だなあ。

    今となっては、どちらもSFの分野ではかなりクラシックなアイデアとなってしまった。

  3. キャプテンフューチャー・シリーズにおいても、とある作品の核アイデアになっている。それがどれかは読んでのお楽しみ...といっても、現在入手可能なものは一部に限られているが

  4. 広い意味では、実験室の卓上の装置の中で「我々の宇宙とそっくりのミニチュア宇宙が作られ、それ自身の進化を続けている」というアイデア(こちらは箱庭宇宙というべきか)も含まれると言って良いだろう。

  5. どちらで書かれた作品でも、読了後に「もしかしたら我々の宇宙も人工の箱庭宇宙なのでは?」と思わせ、少しだけ背筋が涼しくなるところがポイントである。


身分制度[みぶん・せいど](参考)

  1. 最近はあまり聞かれなくなったが、以前は盛んに「士農工商XXXXSF作家」などと言われていた(半ば面白がり半ば自虐気味にだが、こう言っていたのはSF作家自身。念のため。)ものであった。
    これに追従するように、我々も「士農工商XXXXSFファン」等と言っていたものである。

    この用語がなぜ最近は聞かれないかと言うと...SFという市場がかつてほどの規模を失いつつあり、「身分」の一つとも言えなくなって来ているからであろう。
    みんなもっとSFを買って読もう!

  2. 江戸時代には「士農工商」という4つの身分が決められており...というやつはあまりにも有名であるが、教科書にも載っているくせに必ずしも事実ではないようで、江戸幕府の公式な制度としては存在しなかったという説もある。


ミニミニ・ブラックホール[みに・みに・ぶらっく・ほーる](惑星シリーズ)

  1. 石原藤夫博士の惑星シリーズ短編「ブラックホール惑星」にちょこっと登場する、顕微鏡を使わないと見えないくらいの(...ブラックホールはどのみち見えないが)超マイクロサイズのブラックホールのこと。ビッグバンの時に大量に生成された可能性が有る...らしい。

    ご飯にふりかけて食べると、体内のあちこちで時間が逆転したり空間がよじれたりして、そこいらのドラッグの数百倍の刺激的な体験になるという。当然ご禁制の代物である。

  2. レンズマン・シリーズに登場する「シオナイト」の正体だが、実はこのミニミニ・ブラックホールを主成分として含むのではないか?...という説も有る。


民間人[みんかん・じん](宇宙軍用語!?)

  1. ここでは、プロ・アマを問わず「SFファンでない」人のこと。

    SFファングループではファン同士で家庭を持つに至る場合が多いが、もちろんそうでない場合も少なくない。
    このような場合、ファングループ主催の披露パーティなどで「奥様は民間の御出身で...」などと紹介されるのが慣例になりつつあるようである。ふーむ。


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ムウ帝国[むう・ていこく](参考)

  1. 東宝映画「海底軍艦」に登場する海底王国。女皇帝の支配する呪術性の強い政治形態であるところなど、「邪馬台国」を彷彿とさせるところも有る。
    その科学力は地上世界よりも遥かに進歩している...と確信し地上支配を企むが、実は第2時大戦末の日本海軍の技術力にも及ばなかった。

  2. 12000年前、太平洋上に存在していたとされる大陸上の帝国。
    「ムウ大陸には高度な文明が繁栄していたが、一夜にして海底に沈没してしまった」という余りにも有名な伝説の起源は以外に新しく、自称元イギリス陸軍大佐J・チャーチワードのでっち上げ本『失われた大陸ムー』(1931)が始まり。
    プラトンの語るアトランティス伝説とは異なり、伝説のもとになった事実らしきものもなさそうで全くのフィクションだが、それだけに様々な空想の舞台となっている。

  3. 上記の「12000年」という数字だが、いかにも「10000年じゃあ切りが良すぎてリアルさがないからもう少し足しとこう」といった意図が見え隠れする数字で、チャーチワードも大山師の割には細かい気遣いのできる人物のようである。

    ところで、「魏志倭人伝」の中にもこの12000という数字が出てくる。
    「邪馬台国までの総里程12000里」というやつがそれである。
    魏志倭人伝に出てくる数字の方には色々と細かい内訳もついており、それらを合計すると大体12000になる(計算の合わないところは誤差という説もある)ことから、まるで根拠のない数字とも言いきれない。
    この一方、松本清張氏が著書「清張通史(2)邪馬台国」のなかで主張しておられる「魏志の倭人伝以外の部分を見ると、遠くにある国はすべて12000里ということになっているから、12000とは具体的な数値ではなく”とても遠い”と言うことを意味する抽象的な形容にすぎない」という説もなかなか説得力がある。

    チャーチワードがインドの寺院で目にしたという粘土板が実在し、その上に本当に「12000年前」と書かれていたとしても、それは「ずっと昔」というだけの意味なのかもしれない。


無慣性航法[むかんせい・こうほう](銀河パトロール隊)

  1. スミスがレンズマン・シリーズのために発案した“ワープ航法を使わない”超光速理論。
    物体の慣性質量を見かけ上ゼロにすることにより超光速を実現するというもの。無慣性状態では周囲の媒体との摩擦により最高速度が決まるため、十分な推力があれば容易に超光速に到達できる、とされている。
    “バーゲンホルム機関”と呼ばれるシステムにより実現されている。

  2. ところで、無慣性航行前の固有速度(無慣性航行に移行する直前に船や物資が持っていた慣性運動)は無慣性航行中は現れないが、無慣性航行終了と同時に再現する(元に戻る)ということになっている。このため、無慣性航行中に何かを積み込んだりする時は注意が必要である。途中で積み込んだ貨物の固有速度と船体の固有速度とに大きな差がある場合、無慣性航行終了と同時に船体内部の隔壁に貨物が猛スピードで激突する等と言った事故が起こる可能性がある。

  3. わざわざ無慣性にしておいて光速を突破させるあたり(慣性質量がゼロになれば---星間物質による摩擦抵抗以上の推力さえ有れば---簡単に光速以上になる)レンズマン・シリーズにおいてはスミスも相対性理論に気を使っているようである。毎度毎度こいつを無視していると、流石にまともなSFファンからは相手にされないとでも思ったのだろうか?...そう気にすることもないと思うんですが。

  4. ところで、無慣性状態の効果というやつはどこまで広がっているのだろうか?
    バーゲンホルム機関が搭載された宇宙船は当然丸ごと(積み荷や乗員もすべて)無慣性状態になっている訳だが、船体の外に飛び出している部分や直ぐ近傍に浮かんでいるものはどうなのであろうか?
    無慣性航行中に宇宙空間へプローブを突き出したり、また収納式の砲塔を突き出したりすることもあるだろうから、当然船体に接続されているもの(絶縁されてないもの)はバーゲンホルム場に浸されていると考えるべきだろう。ここまでは良いですね?

    さて、無慣性航行で飛行中に船体外板に接触した物は一時的にせよ無慣性状態になっていると考えられ、しかも船体から離れたとたんに有慣性状態に戻ってしまう筈である。船体に接触して跳ね返った瞬間は超光速だが、船体から離れた瞬間とたんに亜光速になる。このような「船体に押されて運動する星間物質」は船体の先端から光速以上で離れることができないから、一種のショックコーンのような層を形成しつつ広がって行くしかない。

    こうした事情から、無慣性航行で飛行する宇宙船は超音速ジェット機の衝撃波にも似た「亜光速で運動する物質の層」を作り出しつつ飛ぶことになる。
    この亜光速の層の先端角度は宇宙船が速く飛べばそれだけ鋭角になり、光速の10倍程度の時に10度程度、光速の100倍ならば1.6度にもなる。この層は物質が高密度に圧縮されている(船体から跳ね返った直後にどれもこれも亜光速に速度が揃ってしまうため)から、運動する船体が摩擦を起こすのは避けなければならない。星間物質の密度が比較的高い銀河内部の空間では、この問題は非常に重要になると思われる。
    こうした摩擦による速度ロスを避けるためには船体の船首が尖っていなければならない訳で、レンズマンにおける宇宙船のデザインが「針のように尖った船首」を持っているのは実にこの理由によるのである。


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メタルスポンジ脳[めたる・すぽんじ・のう](キャプテンフューチャーなど)

  1. グラッグの頭脳部分の主要構造。微細な金属回路がスポンジ上に配線され・からみ会い、通常の方法では達成不可能な高密度の回路を形成している。

  2. キャプテンフューチャー各巻を素直に読む限り、グラッグは普通の人間と比べて「頭の回転」が鈍いとは思えないし、メタルスポンジ脳の処理速度はかなりの高速と考えられる。スピードのみを考えるならば「銅配線」を採用したいところだが、「鉄の神経お許しを」という短編があることから、ある種のスチール材で配線されているらしい。
    また、高速ゆえにかなりの熱を発生する筈である。単純に回路密度を上げるだけなら必ずしも「スポンジ」構造を採る必要はないから、これは効率よく放熱するためと考えられる。メタルスポンジの孔部を冷却液が流れる強制液冷式で、グラッグの筐体(胴体外壁)へヒートパイプか何かで熱を逃す構造にちがいない。


メドン[めどん](グレーレンズマン)

  1. 第2銀河系(?)の中でも我々の銀河系寄りの辺境空域にある惑星。またはそこに住む人類型種族のこと。
    長年ボスコーンの攻撃にさらされており、これから逃れるために惑星全体を無重量(無慣性?)化して脱出の機会を練っていた。絶えずボスコーン船の監視(封鎖)を受けていたため脱出できずにいたが、ドーントレス号との交戦により一時的にメドン付近の空域からボスコーン船が姿を消したため、脱出の機会を得た。
    ドーントレス号が惑星メドンに立ち寄ったのは、ボスコーン中枢を求めての捜索行の途中であった。これをきっかけにメドンは銀河系へ脱出し、銀河分明に強力な同盟者がまた一つ加わった。

  2. コンパクトで強力な動力源についてはパトロール隊よりも数段進んだ技術を持っていたが、攻撃用兵器については事情が逆であるため、パトロール隊との間で技術交換が為された。

    大統領制であることから、民主主義的政治形態を持っていると思われるが、長年防衛戦争を続けており、対独戦(バトル・オブ・ブリテン)時の英チャーチル体制のように指導者個人に権力の集中した総力戦体制であると推測される。


メンター[めんたー](銀河パトロール隊)

  1. 綴りはMentor。教師,指導者を指す一般名詞。語源は、叙事詩「オデッセイ」に登場する助言者の名前から。

  2. レンズマンたちを直接指導するアリシア人の呼称。ごく一部の例外を除き、レンズマンは生涯にただ一度アリシアに留学しメンターとの会見を経験する。ただしその実像は当のレンズマンたちにとってさえ不明である。何しろ会った本人ごとにアリシアのメンターの姿は異なって見えるのだ。地球人が会いに行けば地球人の形態で現れることが多いが、これとて一定の姿がある訳ではない。リゲル人にとってはリゲル人の姿に見えるのであろう。
    実態はアリシアの長老4人による精神融合体である。

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もう一つの地球[もうひとつ・の・ちきゅう](参考)

  1. 「太陽系にもう一つ地球とそっくりな惑星があったら」というアイデアのこと。SFでは古典的と言うべきアイデアの一つで、太陽を挟んで公転軌道の反対側にもう一つの地球が存在するというケースがほとんど。
    「クラリオン」や「ゴル(反地球/カウンターアース)」など、作品によって名称は異なる。

  2. 惑星が公転する場合角速度は一定でない(一定なのは面積速度)ので、例え太陽を挟んで反対側にもう一つ惑星があっても、公転軌道がある程度以上に極端な楕円であれば、向こう側の惑星が太陽の隣に顔を見せることもあろう。
    しかしながら実際の地球の公転軌道はほぼ円で、また太陽の直径は地球の100倍以上であり、この脇に向こう側の惑星が(例えあったとしても)見える可能性はまずない。

    見えないものは否定できず、否定できないものは肯定してもかまうまい!…という訳で、この古典的なアイデアを未だに繰り返し持ち出しては「UFOはもう一つの地球から飛来する」などと(子供相手に)主張する輩は後を絶たないのである。
    SFの伝統的アイデアを安っぽいノンフィクション仕立てのネタに横領するのは、いいかげんに止めて欲しいものである。伝統的アイデアってのはSFの作り手とファンが大事に育ててきた共有財産だと思うのだが。

  3. 1990年にボイジャー惑星探査機が太陽系を離脱するにあたり、カメラをぐるっと振り向かせて「太陽系のパノラマ」写真を撮影し伝送してきたことは、まだご記憶の方も多いであろう。むろん、この写真にもう一つの地球の姿はない。

燃える傾斜[もえる・けいしゃ](燃える傾斜)

    眉村卓氏による和製スペースオペラの初期傑作。
    早川文庫SFに収録されていたが絶版、長い間入手難であったが、大変めでたいことにハルキ文庫にて復刻された。
    本作を読んだことのない宇宙活劇ファンは「かなり不幸」である。

    管理社会に適応できず、挙げ句の果て何もかも失った主人公シロタ・レイヨが、ふとしたきっかけで銀河宇宙の運命に関わる大冒険に巻き込まれるといった−−−ハミルトンの「スターキング」をも思わせる−−−スペースオペラ王道のストーリーである。
    現在の社会では評価してもらえないタイプの人間だが、「るとこへ出れば誰よりも評価されるという「マイノリティのためのサクセスストーリー」「大人のためのファンタジー」の要素に満ちている。周囲に理解者(同好の士)の少ないSFファンの心理のツボをビシビシ押さえながら、燃えるストーリ展開・スケールのでかい宇宙戦闘シーンなどとあいまって文句なしに面白い!!

木材[もく・ざい](参考)

  1. 「スペース・オペラ用語集」に何でこんな項目があるかというと、イワン・エフレーモフ作「宇宙翔けるもの」の中で、異星船とのドッキング部分を作る材料として登場するからである。人手でも加工しやすく、また船外に放置すると接合部に適当に馴染んだ形で凍結してくれるので、大変使いやすい建材という扱いである。
    筆者も最初に読んだ時にはちょっと驚きました。

    長い航海(航宙)に耐えるには、数人以上の人員とに加え、広さがある程度以上の個室が必要と思われる。この場合内装が金属・プラスチックのみという訳にもいかないだろうし、模様替え(実用と乗員の暇つぶしを兼ねて)のために多少の素材を積んでいるのかも。宇宙船のスポンサーの一つに東急ハンズが入っていたりして...

  2. 講談社文庫,福島正美編SF傑作選:千億の世界で読めますが、すいませんこれも現在は入手不可なので図書館で探して下さい。

    筆者が高校〜大学生の自分には、こうした評価の定まった傑作・名作を文庫本のアンソロジーで手軽に読めましたが、最近はどうなんでしょうね。
    冬の時代とやらに入っちゃうと、こうした「インフラ」もなくなっちゃうんですなあ。


モビル・スーツ[もびる・すーつ](機動戦士ガンダム)

  1. 30年前に実現していたら「モービル・スーツ」と呼ばれたであろうことは相違なく、近い将来に実現した暁には「モバイル・スーツ」と呼ばれるであろう。

モールス符号[もーるす・ふごう](参考)

  1. 1837年にサミュエル・モールスによって考案された通信用符号体系。耳で聞いた時の印象から、俗に「トン・ツー」などと呼ばれる。

    短点と長点(短点の3倍の長さ)の組み合わせで文字を表現する一種の可変長コードである。
    ちなみに「S」は「・・・」で「O」は「−−−」なので「SOS」は「・・・−−−・・・」となり、もっとも単純で手早く送信できる符号になる。

    最初は有線の電信用に使用されたため、回路のON/OFF(ONの時が短いか長いか)で符号を送っていたが、無線電信に使用されるようになってからは、1kHz程度の音を断続して送った。
    この場合、搬送波を断続させているのに等しいので、信号伝達の立場からは効率が良く無線の到達距離も最も大きくなる。また送信機の構造も簡単で信頼性が高くなる....という訳で古典的なモールス符号もそうそうバカにした物ではないのである。

    あまり熱心にモールス符号の勉強をしていると、生活雑音までモールス符号に聞こえてくるそうです。

  2. 「宇宙のスカイラーク」の中程で、シートンがデュケーヌの(盗んで逃げた)宇宙船の外壁に銃の弾を当てモールス符号を送信するシーンが出てきますが、短点はともかく長点はどうやって送ったんでしょうか。単純に弾を発射する間隔を空けただけでは、本当に長点になるのかなぁ?



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